学びの日記

日々の勉強記録

国家緊急権

ロックダウンの議論の機運が高まりつつある。ロックダウンに国家緊急権が必要なのか?諸外国はどうしているのか?

国家緊急権

戦争や災害などの非常事態において国家を維持するために、国家が憲法を一時停止し非常措置をとる権限。濫用の懸念を考えると、またそもそも「事実あるいは政治の問題」であることからしても、自然権としては認められない(芦部)。そこで、このような例外的権力を要件を含め実定化している国がある。

日本国憲法には規定はない。

各国のロックダウン

イギリス明文的な国家緊急権の規定はないが、コモン・ロー上でマーシャル・ルールとよばれる非常時の通常法停止の法理が認められている。今回イギリスではマーシャル・ルールの発動ではなく、1984年公衆衛生法の枠内でのロックダウンが行われている。

参考:英国における緊急事態法制と軍隊の国内動員 - 防衛研究所

アメリカでも明文の国家緊急権の規定はない。トランプ大統領は国家非常事態を宣言しているが法的根拠は曖昧という(下記出典参照)。実際の制限は、州の権限で行われている。

一方で大陸法系では憲法に国家緊急権を定める国が多い。ただし、今回ドイツ、フランスは、通常の法で対応している(ドイツは「感染保護法」、フランスは「衛生緊急事態法」)。イタリア、スペインは国家緊急権で対応している。

www.yomiuri.co.jp

www.nikkei.com

参考

 

 「憲法上の国家緊急権 概説」

https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_999552_po_20030104.pdf?contentNo=4

 

福徳岡ノ場

以下のニュースから。

news.yahoo.co.jp

伊豆・小笠原諸島の海底火山

西之島でも同様に新島が出現したが、こんなことがどの程度頻繁に起こっているのだろうか?ということで、伊豆・小笠原諸島の海底火山をみてみる。

  • 西之島:1973年に近くに新島が出現。2013年の噴火で新島が西之島に合体した。
  • 海形(かいかた)海山:標高-165m。活動記録なし。
  • 海徳海山:標高-97m。1984年の噴火では一時岩礁らしきものが海面に現れた。
  • 噴火浅根(あさね):標高-14m。北硫黄島近く。最後の噴火確認は1945年。
  • 海勢西ノ場:標高-187m。硫黄島近く。最後の噴火確認?は1974年。
  • 北福徳堆:標高-55m。最後の噴火確認?は1988年。
  • 福徳岡ノ場:標高-25m。1904年、1914年、1986年の3度の新島形成が確認されている。(当時は新硫黄島命名されたが、浸食されまもなく没した)
  • 南日吉海山:標高-84m。1996年に変色水を確認。
  • 日光海山:標高-392m。1979年に変色水を確認。
  • 福神海山(福神岡の場):標高-43m。最後の噴火確認は1984年。

参考:

www1.kaiho.mlit.go.jp

 

 

EEZ排他的経済水域)を増やすか?

かりに今回の"島"がそのまま育って残るとしても、位置関係的に南硫黄島の北にあり、その島の作る半径200海里の領域のほとんどが現在のEEZと重なっているのであまり期待できなそうである。

福徳岡ノ場の位置

日本のEEZ

www1.kaiho.mlit.go.jp

 

弾性力学 | ひずみ

前回の続きの勉強。「弾性力学」第3章 ひずみ。

物体が外力を受けて変形するとき、各点の変位はひずみと回転の合成で表される。ひずみが局所の変形に相当する部分で、内部の面が決まると座標軸方向に伸び縮みする成分(垂直ひずみ)とひしゃげる成分(せん断ひずみ)に分けることができる。ひずみも応力と同様、面に応じて3成分が定まる量でテンソルで表される。応力と同じように主軸、主ひずみ、主ひずみ面が定義される。

ひずみから変位が一意に定まるという条件から、ひずみの適合条件式が6つ得られる。ひずみは6成分、変位は3成分だからひずみの成分は6つすべてが自由ではなく、この適合条件式を満たすことが必要十分条件になっている。

次回はこの変形と応力とを結びつけるところ。

 

テンソル #1

テンソルの復習。本日は「ベクトル解析30講」の第3~4講を読んだ。

ベクトル空間Vに対し、VにRを対応づける線形関数全体の集合V*を考える。ここに和・スカラー倍を導入するとV*もまたベクトル空間となる。これがVの双対空間である。

Vの元xに何らか基底を導入して成分表示することを考える。V*において「xにxの第i成分を対応づける線形関数」を考えるとき、これらはV*の基底をなす。これはVに導入した基底に対応して定義されるもので双対基底という。

Vの元を縦ベクトルで表すとき、V*の元は横ベクトルと対応づけられる。では(V*)*ってどういうものか?線形関数f:x→f(x)だとしたら、xにいろいろな線形関数を適用するというふうに視点を変えることでX:f→f(x)という線形関数を考えることができる。このXをxと同一視することでV=(V*)*と考えれられる。これによりVとV*とはまさにどちらが主でどちらが従といえない対の関係になる。次回にようやくテンソルが登場する見通し。

 

 

抗体カクテル療法

本日の記事。抗体カクテル療法とはどのようなものだろうか?

nordot.app

抗体カクテル療法とは?

リジェネロン社が開発しロシュ社が獲得した商品名「ロナプリーブ」という医薬品のことで、カシリビマブ、イムデビマブという2種類のモノクローナル抗体*1を組み合わせたものである(ので抗体カクテル療法といわれる)。これらの抗体が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に結合し、中和作用を発揮する。抗体医薬には「~マブ」という名称をつけるのがお約束。

日本では7月に厚労省が特例承認し、中外製薬が独占販売権を得ている。

効果は?

第III相臨床試験で、入院・死亡リスクを7割低下させ、症状持続期間を4日短縮させると評価された。

www.chugai-pharm.co.jp

対象者は?

「SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者」となっている。また「入院患者」を対象としていて、高齢者施設・自宅は対象にならない。ただし宿泊療養は臨時の医療施設とみなす。

出典:新型コロナウイルス感染症における中和抗体薬「カシリビマブ及びイムデビマブ」の医療機関への配分について

https://www.mhlw.go.jp/content/000819035.pdf

参考

toyokeizai.net

*1:ふつう免疫で獲得する抗体は病原体のいろんな部位に対応する抗体なので、感染を効果的に抑える抗体に限らず多くの種類ができるのだが、モノクローナル抗体というのは単一のタンパク質に対応するある意味純粋な抗体のこと。

弾性力学 #1

地震関係調べていたので弾性力学を復習。弾性力学のいったんの目標は、物体の境界条件を与えたときに物体内部に力がどうかかるのか、また物体がどう変形するかを知ることである。理論的には古典力学の適用である。

本日は第1章 応力。まずは力のかかりかたの部分。

物体の内部の面にかかる単位面積あたりの力を応力という。面を指定すれば応力はベクトルで表される。そのうち面に垂直な成分を垂直応力、平行な成分をせん断応力という。ある点に着目すると、面の取り方はベクトルで指定でき、それぞれの面で応力ベクトルが決まるので、応力はベクトルからベクトルへの写像、つまりテンソル量である。

応力が極値をとる方向を主軸、そのときの応力の値を主応力といい、通常3つある。線形代数的に言えば、主応力の3つの値は応力テンソルを表す行列の固有値で、主軸の方向は固有ベクトルである。そして想像されるように主軸方向に垂直な面をとれば、その面のせん断応力は0である。

微小体積での力の釣り合い式を平衡方程式という。またモーメントの釣り合いからは応力テンソルが対称であることがわかる。つまり、線形代数の知識から、重複も込めて3つの実の固有値が存在するということである。

応力テンソルは9個の成分をもつが、そのうちモーメントの釣り合いで3つが決まり、力の釣り合いで3つが決まる。まだ3つの自由度があるので、釣り合い式だけでは応力が定まらない。この解決には変形の考慮が必要ということである。次章に続く。

 

 

発震機構解

8月14日、ハイチでMw7.2の地震が発生し、大きな被害が懸念されている。ハイチ周辺はカリブプレートと北米境界が衝突する地域。震源15.5kmと浅いことから、2010年の地震と同様、いわゆる直下型地震の可能性が高そう。

USGSによる発震機構解などの詳しい情報は次のURLを参照のこと。

https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us6000f65h/executive

ここでは、USGS気象庁が発表する発震機構解の読み取り方をまとめてみる。

震源球の読み方

地震のメカニズムをざっくり知るには、発震機構解を図示した震源球を見るのが早い。これは、震源を中心とする球の下半分を上から見たものである。今回のハイチ地震では次の通り。

f:id:fumih:20210817180151p:plain

出典:https://earthquake.usgs.gov/earthquakes/eventpage/us6000f65h/moment-tensor

2本の黒曲線で表されているのが節面(Nodal Plane)でこのうちのどちらかが断層面である。どちらかは図だけではわからず、余震分布など追加の情報から特定する。

2本の曲線により分けられた4つの領域のうち、無色の領域が「引き」(=外から押される、主圧力軸(P軸)のある方向)、有色が「押し」(=外に引っ張られる、主張力軸(T軸))に対応する。図上のP,Tという文字は、P/Tの各軸方向を示している。

断層のずれのタイプ(正断層型、逆断層型、横ずれ断層型)もこの図から読み取ることができる。ざっくりいうと、

  • 交点が中心に近いほど、横ずれ断層型
  • 交点が倒れているとき、引き(無色、P)が上なら正断層型
  • 交点が倒れているとき、押し(有色、T)が上なら逆断層型

となる。

今回の場合、USGSの解析では、東西方向の節面が実際の断層面であり、東西の走向、北に50度ほどの傾斜を持つ面を、30度ほど上の方向に左横ずれしている。

断層の方向と滑り方を詳しく知る

断層面とすべり方向を知るには断層パラメータを見る。ざっくりいうと走向と傾斜で節面の空間的な配置がわかり、すべり角でどの方向に滑ったかがわかる。

  • 走向(Strike):北から時計回りに測った角度。
  • 傾斜(Dip):水平面から下向きに測った角度。
  • すべり角(Rake):走向方向の水平から反時計回りに測った角度。

参考

www.data.jma.go.jp

www.hinet.bosai.go.jp